不動産を売却するならまずは不動産会社(仲介業者)に相談……という方も多いかと思います。確かに物件を売るなら仲介業者という選択は間違いではありません。ただし、「流通する通常物件」が前提ということを知っておく必要があります。再建築不可物件の場合は扱っている会社が少なく売りづらいのに加えて、「再建築不可」という弱みを突かれてトラブルになるケースも多々あります。
不動産仲介業者に再建築不可物件の売却の仲介依頼をしたことで発生したトラブル事例と注意点を、弊社が提携する廣瀬先生にお伺いしました。
廣瀬先生の紹介
廣瀬先生は訳あり物件(再建築不可物件や事故物件、共有持分物件など)を専門に取り扱われてきた専門家です。
実務と法律知識が豊富で、法律の専門家である弁護士や、不動産売買のプロである不動産仲介会社も頼るほどの、名の知れた訳あり物件のスペシャリスト。
数々の経験をもとに、訳あり物件に関する問題をクリアにし、売買を成立させ、価値ある物件へ生まれ変わらせた実績があります。
まずは瑕疵担保責任を知ってください~仲介業者編~
インタビュアーよろしくお願いいたします。さっそくですが、不動産仲介業者を通じて再建築不可物件を売却する際にはどんなことに気をつければいいですか?
廣瀬先生まずは売り主に「瑕疵担保責任」が発生することを念頭に置いてください。物件に瑕疵=不具合が発生した際には売り主が買い主に対して責任を取らなければいけません。瑕疵には雨漏りやシロアリ被害といった建物に関する瑕疵、地盤沈下や汚染といった土地に関する瑕疵、近くに一般的に忌避される施設(火葬場や反社会的勢力の事務所など)がある心理的瑕疵など、さまざまなものが挙げられます。再建築不可なども瑕疵に含まれます。
売買契約締結後にこうした瑕疵が発覚すれば、売り主は損害賠償や補修、契約解除などの請求に応じる法的義務が発生します。
インタビュアー不動産仲介業者は対応してくれないんですか?
廣瀬先生不動産仲介会社はあくまで売買を仲介するだけなので、瑕疵担保責任は負いません。話をしても「知らない」と言われてしまう可能性が高いです。瑕疵担保責任は全部売り主にかかってくるので注意してください。
《1年後に2500万円の請求》忘れた頃にやってくる支払い「義務」の恐怖。
インタビュアー不動産仲介会社を通じて物件を売却したことで発生したトラブルの事例を教えて下さい。
廣瀬先生個人情報があるので、実名は伏せますね。Aさんは神奈川県のとあるターミナル駅から徒歩10分のところにある自宅を売却したいと考え、大手仲介業者B社と専任媒介契約を結びました。再建築不可物件ではありましたが、立地がよかったこともあり、すぐに買い手が見つかりました。
売却価格は2800万円。引き渡しも終わり、入金も済んだと一安心していたAさん。しかし、その1年後に売り主から1通の封筒が届きました。開けてみると物件に瑕疵があった旨と、その修理にかかる費用の請求書が入っていたのです。
雨漏りしていたので屋根の張替えで300万円、柱がシロアリに食われてリフォームで2200万円。合計2500万円もの修理費用を瑕疵担保責任として立て替えるよう書かれていました。
インタビュアーAさんは言われるまま修理費を支払ったんですか!?
廣瀬先生Aさんはすぐに大手仲介B社に相談しましたが、あくまで瑕疵担保責任は売り主側に発生するということで何も対応してくれず。結局修理費を全額支払いました。
物件を2800万円で売ったものの、最終的に手元には300万円しか残らず、Aさんは悲嘆の表情は今も私の脳裏に焼き付いてます。
インタビュアーかなり悲惨ですね。どうにかならなかったんですか?
廣瀬先生残念ながら法的義務がある以上、残酷ですが「知らなかった自己責任」として回避はできません。
実は瑕疵担保責任は個人間の取り引きの場合は時効が10年もあるのです。今回はまだ1年後とあまり年月が経っていなかったため、当然瑕疵担保責任は成立します。ただ、売却益が手元に残っていたAさんはなんとか修理費を工面することができました。
でも、仮にあなたが物件を売却して10年後に請求書が来たらどうですか?おそらく物件を売却して得た現金も使ってしまった後で、2500万円もの大金を支払えますか?
インタビュアー恐ろしい。とても支払えないですね……
廣瀬先生今回のようなケースは決して珍しくはありません。実際にはよくあることです。
忘れた頃に高額の請求書が届くことがいかに怖いことか。物件を売却する際にはこうしたリスクがあることを知っておいてください。
《裁判沙汰になったケース》売却から半年後、突然の訴状。訳も分からず裁判へ。
インタビュアー瑕疵担保責任では損害賠償請求をされるリスクもあるんですよね。やっぱり裁判になることもあるんですか?
廣瀬先生ありますね。裁判沙汰に発展することも非常に多いです。Cさんは仲介業者D社を通じて東京都内にある築年数が古い再建築不可物件を売却しました。買い主は引き渡し後にリフォームしたのですが、壁を剥がしたらアスベストが出てきたんです。発がん性がある物質で今では建物に使うことが禁止されています。
買い主から瑕疵担保責任を追求され、損害賠償を求めて裁判を起こされることになったのです。
Cさんは突然のことでびっくりして、買い主と直接話し合うため連絡しましたが、すでに弁護士が立てられている状況。売買を仲介したD社に契約上の問題がなかったか?確認も含めて対応して欲しいと依頼しましたが、「個人間の取引なので当事者同士で解決してください」と非情な返事しか貰えませんでした。
インタビュアー結局裁判になったんですか?
廣瀬先生はい。Cさんも自分で弁護士を立てて、法廷で争わざるを得ない状況になりました。裁判は長期化して弁護士費用と裁判費用を含めて500万円以上かかりました。さらに、敗訴となって1000万円の損害賠償支払い義務が生じたのです。
もちろんお金の問題も大きいのですが、一般人であるCさんは裁判によるストレス、近所からは心無い噂を拡げられ、家族からも冷たく当たられ、精神的に相当疲弊していました。
インタビュアー普通に生活していれば裁判をする機会はまずないですよね。
廣瀬先生裁判沙汰になって怖いのは「費用」と「精神的消耗」の2点です。
実際、裁判費用と呼ばれる、裁判を起こすための費用はそれほど高いものではありません。ただ、弁護士費用は相当高額になり、何百万とかかるのはざらです。裁判は月1回公判が開ければ早い方で、実際には弁護士同士のスケジュールが合わなくて2~3ヶ月に1回。ひどい弁護士だと半年空いたというケースもあります。
これは本当にスケジュールが合わないというケースもあるのですが、自分の相談料を長く・多く取るために、お互いの弁護士同士が申し合わせて長期化させるケースも多いのです。
裁判で期間が開くならその間は費用が発生しないと思われがちですが、実際はなんだかんだ言って相談料などの費用がかかり続け、結果的に何百万にも膨れ上がってしまいます。
あとは裁判による精神的なダメージも大きいですね。今まで普通に・トラブルなく生きてきた人が訴えられてしまうのです。私たち不動産のプロは裁判にもある程度慣れています。むしろ「良い経験になった」「勉強になった」と思えるくらいの余裕もあるのですが、一般の方にとって裁判は馴染みが薄いもの。不動産仲介業者を通じて物件を売買するということは、普通に暮らしてきた人がある日突然訴えられて被告人になってしまうリスクがあるということなのです。
現在はもっと厳しい!「契約不適合責任」を分かりやすく解説
インタビュアー売り主にとっては裁判沙汰になるリスクもある瑕疵担保責任が非常に怖いことがよくわかりました。
廣瀬先生実は2020年4月1日の民法改正時に瑕疵担保責任がもっと重い「契約不適合責任」というものに変わったんです。瑕疵担保責任は「隠れた瑕疵」があった場合に買い主が売り主に「損害賠償」と「催告解除(契約の履行を催告した上で従わない場合は契約解除をすること)」を請求できる制度でした。契約不適合はその名の通り「契約に適合しないもの」に対して損害賠償請求と契約解除に加え、「追完請求(修理や修繕、代物弁済)」、「代金減額請求」「無催告解除(契約の履行を催告しなくても契約解除できること)」が請求できるようになりました。
インタビュアーより売り主の責任が重くなったということですね。
廣瀬先生そのとおりです。買い主の権利をより手厚く保護する目的で改正されたのですが、逆に言えば売り主にとってはより責任の範囲が広くなり、リスクが高くなったと言えます。
【廣瀬先生より】売り主の皆様が損をしないために
不動産を売却する方がトラブルに巻き込まれない・損をしないために押さえておくべきポイントは「瑕疵担保責任免責」です。先ほどもご説明したように、あくまで仲介業者は個人間の取り引きを仲介するだけ。個人間取り引きではどうしても瑕疵担保責任が発生します。特にリスクが高い再建築不可物件を売却する場合は、瑕疵担保責任を免責としている「不動産買取業者」に売りましょう。
そもそも、不動産仲介業者は何の問題もない「流通する物件」を売るための窓口です。築浅物件など瑕疵が生じる心配が少ない物件を売るなら仲介業者を選択しても良いかもしれません。しかし、トラブルが発生するリスクが少しでもあるのなら避けるべきです。
繰り返しになりますが、不動産仲介業者を通じた売買は個人間での取り引きであり、仲介業者は責任を負う義務がないことを忘れてはいけません。
ただ、不動産買取業者ならどこでもいいというわけではありません。買取業者に売却しても瑕疵担保責任に関連したさまざまなトラブルが発生するリスクがあります。「買取業者へ売却!契約不適合責任に要注意!」で事例を交えて解説しているので、必ずお読みください。
「瑕疵担保責任免責」「契約後即支払い」を重視!
再建築不可物件は不動産買取業者に売却しましょう。その際に意識してほしいのは「瑕疵担保責任免責」と「契約後即支払い」です。瑕疵担保責任が免責になれば後々のトラブルが回避できます。また、契約後に代金がすくに支払われれば買取価格のダンピングや一方的な契約解除などのトラブルを防ぐことが可能です。詳しくは「買取業者へ売却!契約不適合責任に要注意!」で解説しています。
訳あり物件買取センターは瑕疵担保責任免責なので、引き渡し後に損害賠償請求をされたり裁判沙汰になったりといったリスクはありません。契約成立後はすぐに代金をお支払いしますので、契約後に損はさせません。不動産仲介業者よりも安全に・好条件での物件売却が実現できます。
買取に関する詳しいサービス内容は「再建築不可物件」をご覧ください。
「物件を売りたい」「どこに相談していいかわからない」という方は、まずはお気軽にご相談ください。
お問い合わせはこちらのページからお願いします。
宮野 啓一
株式会社ティー・エム・プランニング 代表取締役
国内 | 不動産トラブルの訴訟・裁判解決件数:150件 |
国内 | 訳あり物件売買取引件数:1150件 |
海外 | 不動産トラブルの訴訟・裁判解決件数:30件 |
※宮野個人の実績件数
経歴
1964年、東京(六本木)生まれ。叔父・叔母がヨーロッパで多くの受賞歴を持つ一級建築士で、幼少期より不動産や建築が身近なものとして育つ。
日本大学卒業後、カリフォルニア州立大学アーバイン校(UCI)に入学。帰国後は大手ビルオーナー会社に就職し、不動産売買を行う。
平成3年、不動産業者免許を取得し、株式会社ティー・エム・プランニングを設立。同時期より第二東京弁護士会の (故)田宮 甫先生に師事し20年以上に渡り民法・民事執行法を学ぶ。
現在まで30年以上、「事件もの」「訴訟絡み」のいわゆる「訳あり物件」のトラブル解決・売買の実績を積む。
またバブル崩壊後の不良債権処理に伴う不動産トラブルについて、国内・海外大手企業のアドバイザーも兼務し数多くの事案を解決。
日本だけでなくアメリカや中国の訳あり物件のトラブル解決・売買にも実績があり、国内・海外の不動産トラブル解決に精通。米国には不動産投資会社を持ち、ハワイ(ワイキキ・アラモアナエリア)・ロサンゼルス(ハリウッド・ビバリーヒルズ・サンタモニカエリア)を中心に事業を行う。
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