再建築が認められない再建築不可物件。
原則として建て替えはできませんが、実は例外があります。
ある方法を使えば、再建築不可物件でも建て替えができるようになるのです。
ただし、それを実行する際にはいくつものハードルを超えなければならないのも事実です。
今回は再建築不可物件を建て替え可能にする方法と注意点、リスクを回避するためのポイントについて解説します。
特に再建築不可物件を購入した、あるいは相続した方で、建て替えができずに困られている方には何らかのヒントになれば幸いです。
目次
再建築不可物件とは
冒頭でも述べたとおり再建築不可物件とは再建築が認められない物件のことを指します。
再建築とは今回のテーマとなっている建て替えに加え、増築や改築、大規模な修繕も含まれます。
建物を建築するためには都市計画法にもとづき特定行政庁に建築許可申請を行い、建築許可を取得しなければなりません。
再建築不可物件は建築許可が下りない状態であるため、建築許可が必要となる建て替えや増築、改築、大規模な修繕ができないのです。
仮に再建築不可状態にある建物を解体した場合、更地のままにするしかありません。
再建築不可物件は建て替えできない?
建築許可が下りないがために建て替えや増築、改築、大規模な修繕ができない状態となっている再建築不可物件。
なぜ許可が下りないのでしょうか?そもそも建築許可が下りないのに今建物があるのはなぜなのでしょうか?
ここからは再建築不可物件を建て替えできない理由と再建築不可物件が存在している背景について見ていきましょう。
再建築不可状態になっている理由を知ることで、建て替えを可能にするためのポイントについても理解できるようになります。
以下のような前提があることをしっかりと押さえておきましょう。
建て替えできない理由
再建築不可物件が建て替えできない理由は建築基準法を満たしていないからです。
建物はこの法律に則って建てなければならず、建築基準法に準拠していない状態では建築許可が下りません。
建築基準法第42条には「接道義務」というものが定められています。
建物を建築する際には敷地が幅員4m(一部地域では6m)以上の道路に2m以上接していなければならないというルールがあるのです。
敷地に接している道路の幅が4m以下、接している面が2m以下、あるいは道路にまったく接していないといういずれかに該当している場合、建築基準法違反とされて建築許可が下りず、再建築不可物件となってしまうのです。
そもそもなぜ再建築不可物件は存在するのか
ここで、「なぜ建築基準法違反の状態なのに今建物が建っているのか?」と疑問に思いませんか?その背景には建築基準法の改正があります。
接道義務が定められたのは1950年で、それ以前は道路に接していなくても問題ありませんでした。
しかし、建築基準法が改正されたことによって、それまでに建てられた接道義務を満たしていない建築物は違法状態となってしまったのです。
ただし、法改正によって違法状態となった建物をすべて解体するとなると、国民の生活に大きな影響を及ぼします。
そこで、接道義務を満たしていない敷地に新しく建物を建てることはできないけど、例外的に改正前から建っていた建物については所有することを認めるという特例措置が出されました。
接道義務というルールが加わったことで、これまで合法だった建物が違法状態となってしまった。
これが、再建築不可物件が生まれた背景です。
再建築不可物件を建て替え可能にする方法
再建築不可物件は現状のままでは建築基準法違反状態であり建て替えをすることはできませんが、まったく再建築する方法がないのかと言われれば、そうとは限りません。
接道義務を満たすことができれば建築許可が下りる可能性があります。
ここからは再建築不可物件を再建築可能にする方法について見ていきましょう。
特に建て替えができずに困っている方、物件を持て余しているという方は参考にしてみてください。
隣地の買取
隣の土地が接道義務を満たしている場合は、隣地を買収して合筆、つまり土地を合併させることで、接道義務を満たすことができます。
買収費用はかかりますが、再建築ができるようになることと、敷地が広くなるのがメリットです。
また、旗竿地のような土地で間口が狭いことで接道義務を満たしていないケースでは、隣地の一部だけ買い取ることで再建築不可状態が解決できる可能性もあります。
たとえば間口が1.9mの場合、10cmだけ敷地を譲ってもらえば問題ありません。
隣地を借りる
接道義務を満たしている隣地を買収するのではなく借りることでも再建築不可状態を解消することができます。
特に間口が狭い旗竿地の場合は、隣地の一部のみを借してもらうというケースも少なくありません。
法の抜け穴を突くような方法ですが、工事中のみ一時的に隣地を借り、建て替えが終わった後にもとに戻すという手段もあります。
セットバック
接している道路の幅員が狭い場合は、自分の敷地をセットバック(後退)させることで、接道義務を満たせることがあります。
たとえば接している道路の幅員が3.8mの場合、自分の土地を20cm分だけ行政に明け渡して道路としてみなしてもらえば、再建築が認められて建て替えができる可能性があります。
隣地を買収したり借りたりする必要がないので費用はかかりませんが、セットバックした分だけ土地が狭くなってしまうというデメリットもあります。
但し書き規定の申請をする
道路でなくとも、道路と同じように車や人が通行できるスペースがある場合、それを道路とみなすことで建築許可が下りることがあります。
建築基準法第43条の但し書きに記載されているため、こうした空間は「但し書き道路」と呼ばれます。
具体的には大きな公園や広場、私道などが挙げられ、これらに接している場合は建築許可が下りて建て替えができる可能性があります。
ただし、敷地が但し書き規定を満たせる空間と接していることが前提です。
道路の位置指定申請
位置指定とは、これまで道路として指定されていなかった土地を、特定行政庁から新たに道路として認めてもらうことです。
たとえば幅員4m以上の私道に接している場合、それを道路として指定してもらうことで接道義務を満たすことができます。
ただし、上記の但し書き規定申請と同様、位置指定申請ができるような土地に接していることが前提です。
等価交換(旗竿地限定)
等価交換とは同じ価値のものを交換する行為を指します。
旗竿地で間口の幅が足りず、接道義務が満たせていないパターンで有効です。
間口の部分を拡げるために隣地の一部を譲り受ける代わりに、同じ面積分の奥まった土地を隣人に明け渡すことで、接道義務を満たすことができます。
金銭的な支出は抑えることができますが、旗竿地でしか使えないテクニックというのが難点です。
可能にする方法はあるが簡単ではない
以上のように、再建築不可物件を再建築可能な状態にする方法はいくつかあります。
しかし、いずれもハードルが高いのが実情であり、安易におすすめはできません。
再建築不可物件を建て替える場合、以下のような注意点があることを押さえておきましょう。
交渉が難しい
特に隣地を買収する、借りる、等価交換をする場合は、その土地の所有者と交渉しなければなりません。
価格や譲ってもらう敷地の面積、引渡時期などで揉めることもあります。
隣人が首を縦に振ってくれない限り、建て替えることができません。
また、土地を譲ってもらえないと建て替えができないことを知った上で法外な価格をふっかけてくるなど、足元を見てくるケースもありますので、要注意です。
物件への制限
再建築可能な状態にするために物件に制限が出てくるケースもあります。
たとえばセットバックをすれば、行政に道路として明け渡した分だけ自分の土地が狭くなってしまいます。
旗竿地を等価交換した場合、敷地の面積は変わりませんが、奥まった部分=建築物を建てるための土地を明け渡してしまうと、やはり建て替えに制限が出る可能性があります。
特に土地を第三者に明け渡す方法を検討している場合、「残りの土地の面積がどれくらいになるか?」ということも考慮しておきましょう。
掛かる手間と高いハードル
たとえば土地を買収したり借りたり等価交換する場合、隣地の所有者と交渉して契約の締結や登記手続きなどを行わなければなりません。
セットバックや但し書き規定の申請、位置指定申請は行政に手続きを行う必要があり、非常に手間と時間がかかります。
交渉や手続きを行うためには、専門知識も必要です。
さらに、手間をかけても必ず成功するとは限りません。
いずれの方法を選択しても、再建築不可物件を再建築可能な状態にするまでには大変な思いをすることになります。
私道であること
但し書き規定の申請や位置指定の申請を行う場合、その私道や敷地が他人の所有物であるケースも多いです。
当然、他人の土地を勝手に利用することはできません。
また、交渉の結果利用することができたとしても、後々権利関係でトラブルが発生するリスクがともないます。
仮に他人の土地を使用して但し書き規定の申請や位置指定の申請を行う際には、しっかりと所有権者と話し合い、書面で契約を結ぶことが大切です。
コスパの悪さ
特に隣地を買収したり借りたりする場合は買収費用や賃料、登記手続き費用などのコストがかかります。
もちろん、物件の解体費や建て替え費も必要です。
そもそも「それだけの費用と手間をかけてまで再建築不可物件を建て替えるべきなのか?」ということを考える必要があります。
無理に建て替えをして活用しようとするよりも、再建築不可物件を売却してしまったほうが楽で損失が少ない場合も往々にしてあります。
建て替えできないならリフォーム?
再建築不可物件は接道義務さえ満たせば建て替えができないこともありません。
しかしながら、以上のような数多くのハードルを乗り越えなければならず、現実的ではないというのが正直なところです。
それではリフォームはどうでしょうか?建物を建て替えるのではなく、一部をつくりかえたり修繕したりするのであれば再建築不可物件でもできそうな気がしませんか?リフォームであれば建て替えよりも費用がかからず、今ある建物を活かすこともできます。
最後に再建築不可物件のリフォームについて考えてみましょう。
【結論】可能ではある
結論から言うと再建築不可物件のリフォームは可能です。
ただし、「建築許可がいらない範囲内」が条件となります。
柱や梁、床、壁、屋根、階段といった主要構造部のいずれかを1/2以上交換するような工事は「大規模な模様替え」とみなされ、建築許可申請が必要となります。
そのため、一部を交換するというような部分的な工事に限られてしまうのです。
木造2階建て、延べ床面積500㎡以下の建築物、いわゆる「4号建物」であれば建築許可申請は必要ないという特例もあるため、これに該当すれば大規模なリフォームもできます。
ただし、再建築不可物件の多くは70年前の法改正によって再建築不可状態となったため、そもそもかなり建物の老朽化が進んでいるケースも多いです。
リフォームするにも費用がかかり、仮に修繕したとしても耐震性や気密性などの性能やデザインは新築と比較すると劣るかもしれません。
奪われるコスト・時間・労力を許容できるか
再建築不可物件を建て替えできる状態にするためには、さまざまなコストと時間、労力を支払わなければなりません。
リフォームに関しても同様です。
まず考えるべきことは「再建築不可物件のためにコスト・時間・労力をどれだけかけられるか?」ということ。
費用や手間をかけてもリターンやメリットが得られるのであれば、建て替えやリフォームをする価値はあるかもしれませんが、そうでなければ物件を手放してしまったほうがいいかもしれません。
訳あり物件買取センターでは再建築不可物件も好条件で買取らせていただきます。
物件活用ノウハウが豊富で販路も充実しているため、他社では断られた物件も買取可能。
再建築可能状態にしたりリフォームしたりする必要はありません。
そのまま物件をお譲りください。
再建築不可物件がなかなか売れなくて困っている方、活用も建て替えもできずにお悩みの方は、ぜひご相談ください。
宮野 啓一
株式会社ティー・エム・プランニング 代表取締役
国内 | 不動産トラブルの訴訟・裁判解決件数:150件 |
国内 | 訳あり物件売買取引件数:1150件 |
海外 | 不動産トラブルの訴訟・裁判解決件数:30件 |
※宮野個人の実績件数
経歴
1964年、東京(六本木)生まれ。叔父・叔母がヨーロッパで多くの受賞歴を持つ一級建築士で、幼少期より不動産や建築が身近なものとして育つ。
日本大学卒業後、カリフォルニア州立大学アーバイン校(UCI)に入学。帰国後は大手ビルオーナー会社に就職し、不動産売買を行う。
平成3年、不動産業者免許を取得し、株式会社ティー・エム・プランニングを設立。同時期より第二東京弁護士会の (故)田宮 甫先生に師事し20年以上に渡り民法・民事執行法を学ぶ。
現在まで30年以上、「事件もの」「訴訟絡み」のいわゆる「訳あり物件」のトラブル解決・売買の実績を積む。
またバブル崩壊後の不良債権処理に伴う不動産トラブルについて、国内・海外大手企業のアドバイザーも兼務し数多くの事案を解決。
日本だけでなくアメリカや中国の訳あり物件のトラブル解決・売買にも実績があり、国内・海外の不動産トラブル解決に精通。米国には不動産投資会社を持ち、ハワイ(ワイキキ・アラモアナエリア)・ロサンゼルス(ハリウッド・ビバリーヒルズ・サンタモニカエリア)を中心に事業を行う。
再建築不可物件に関する
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