再建築不可物件を買取業者に売却するのはちょっと待って下さい。瑕疵担保責任を理由に物件を買い叩かれたり、一方的に契約破棄をさせられたりといったトラブルに巻き込まれる危険性もあります。
中には最初から金銭を巻き上げるために詐欺まがいの行為を行う悪徳な業者も。トラブルに巻き込まれないために、事例と知っておきたいポイントをご紹介します。
廣瀬先生の紹介
訳あり物件買取センターでは、不動産の専門家である廣瀬先生と提携してお客さまの物件買取をサポートしています。先生は再建築不可物件や共有持分物件、事故物件などのいわゆる“訳あり物件”を専門に取り扱っていらっしゃいます。
不動産売買の実務的な知識はもちろん、法律にも強く、弁護士や不動産仲介会社からも多数相談を受けるという、まさに訳あり物件のプロフェッショナルです。
今回は廣瀬先生に今までのご経験を踏まえて瑕疵担保責任(※新名称:契約不適合責任)にまつわるトラブルの事例や再建築不可物件を売却する際の注意点を解説していただきます。
※2020年4月に民法改正と共に瑕疵担保責任から「契約不適合責任」と法改正された。詳細は本ページ後半にて説明します。
まずは瑕疵担保責任を知ってください~買取業者編~
インタビュアー廣瀬先生。本日はよろしくおねがいします。まずは買取業者に再建築不可物件を売却する上で絶対に押さえておくべきポイントを教えて下さい。
廣瀬先生前提として物件を売買する上で必ず知っておいていただきたいのが「瑕疵担保責任」です。瑕疵とは建物や土地に生じた不具合のことを指します。具体的には雨漏りやシロアリ被害、アスベストなどの有害物質の使用、地盤沈下、土壌汚染といったものが挙げられます。境界の杭がなくて隣地との境界が曖昧であることや、再建築不可物件であること自体も瑕疵となります。
インタビュアー瑕疵があったらどうなるんですか?
廣瀬先生物件の買い主は売り主に対して損害賠償や修繕費の支払い、売買契約の解除、代金の減額などの請求ができます。
ちなみに2020年4月1日の民法改正では買い主の権利を守るため瑕疵担保責任が「契約不適合」に変わりました。基本的な内容に大きな違いはなく、瑕疵が見つかった場合に売り主が責任を取るという趣旨は変わりません。
インタビュアーなるほど。買取業者に物件を売却するケースでは、業者に対して責任を取るという形になるんですか?
廣瀬先生おっしゃるとおりです。この瑕疵担保責任を利用して物件を買い叩いたり、不当に金銭を得ようとしたりする業者が多いのです。
《10分の1の減額にあったケース》3000万の売却が契約後に300万?!
インタビュアー具体的にどんな事例があるんですか?
廣瀬先生仮にAさんとさせていただきます。Aさんは青葉台の自宅を不動産買取業者であるB社に売却しようと相談しました。提示された金額は3000万円で非常に好条件。話はトントン拍子に進んでいきました。
その後売買契約が締結されてAさんはB社から手付金5万円を先に受け取り、残りは2ヶ月後の支払いということになりました。
このときAさんは瑕疵担保責任の存在すら知らず、B社からも話はありませんでした。当然、瑕疵担保責任が免責になるような契約内容ではなく、瑕疵が発覚した際にはAさんが責任を負わなければならないという条件を知らず識らずのうちに飲まされていたのです。
しかし、翌月になってB社の担当者からAさんに突然「欠陥が見つかった。瑕疵担保責任で賠償しろ!」という連絡があったんです。築年数が古いAさんの自宅は雨漏りとシロアリ被害が発生していたそうです。
さらには最低敷地面積の制限(最低限度規制)に抵触していることが発覚し、業者は「この物件は再建築不可だから、これも瑕疵担保責任に該当する」と主張。買取額を300万に減額するよう要求してきました。瑕疵担保責任免責での契約とはなっていなかったので、Aさんは要求を飲む他ありませんでした。
インタビュアー300万円って、当初の1/10ですよね。そこまでダンピングされるなんて怖いですよね。
廣瀬先生そもそも、物を買うときには弊社のように契約が成立した時点でお金を全額支払うのが原則です。しかし、多くの買取業者は2~3ヶ月後に先延ばしし、手付金として5~10万円のみを支払います。場合によっては0円ということもあります。
意図して先延ばししているケースと意図していないケース両方あるのですが、いずれにしても買い取った物件に不具合があった場合のリスクを考えてこのような支払い形態を取っている業者が多いのです。
インタビュアーなぜ支払いを先延ばしにするんですか?
廣瀬先生早く契約したいからですね。契約成立後は基本的に他社へ売ることはできなくなるし、物件に瑕疵があれば契約破棄や代金減額などの要求もできる。買取業者側が一方的に有利になる条件になっているものなんです。
《まさか?!契約破談になったケース》契約から1ヶ月後!業者に売却したのに、まさか…
インタビュアー契約が破棄されることもあるんですか?
廣瀬先生はい。Cさんは買取業者であるD社の査定を受け、同じように高めの買取価格を提示されて早々に契約となりました。嬉々と契約書に印を押し、手付金10万円を受け取ったのです。やはり残りの代金は物件の確認をした上で2ヶ月後に振り込むという話になったのです。
そしてしばらくしてD社からCさんに「隣の住人から境界承諾が取れないから敷地が不明確な状態になっている。再建築不可物件だから契約を解除したい」という連絡がありました。
インタビュアーこの場合、やはりCさんは契約解除に応じなければいけないのですか?
廣瀬先生残念ながら応じざるを得ません。Cさんの問題点は瑕疵担保責任の免責を確認せずに売買契約を結んでしまったことです。法律上業者は免責をつけてもつけなくてもいいことになっています。
インタビュアーポイントは瑕疵担保責任免責ですね。
廣瀬先生D社は自社でCさんの物件を確保したいという考えがあり、Cさんは早々に物件を売りたいという思惑に漬け込んで、早々に契約が決まってしまいました。D社は瑕疵担保責任を免責していないので、物件に瑕疵があればそのまま買い取れるし、仮に問題が発覚した場合は契約破棄ができる。業者にとっては全くリスクはありません。
免責をしていない買取業者はここまで考えているんだということを知っておかないと、後々大損することを売り主側は知っておく必要があります。
インタビュアー訳あり物件買取センターは免責になっていますよね?
廣瀬先生はい。お引渡しいただいた後は売り主さまに「責任を取れ」ということは一切言いませんので、今までトラブルもほとんど起きていません。まずは瑕疵担保責任が免責になっているかどうかをチェックしてみましょう。
現在はもっと厳しい!「契約不適合責任」を分かりやすく解説
インタビュアー先ほど「民法が改正されて瑕疵担保責任が契約不適合に変わった」というお話がありましたが、具体的にどのような違いがあるのですか?
廣瀬先生基本的に瑕疵担保責任と同じで、物件に瑕疵があった場合は売り主が買い主に対して責任を取るというものです。
瑕疵担保責任は「隠れた瑕疵」が前提でした。つまり、売り主が瑕疵(雨漏りやシロアリ被害、再建築不可物件であったこと等)を知らず、買い主に引き渡した後に発覚した場合は損害賠償や契約解除などの責任を負うということです。
一方、契約不適合は物件が「契約の内容に適合しない」ものであったときに売り主が買い主に対して責任を取らなければいけません。瑕疵が隠れていようがいまいが責任を取る必要があります。また、買い主は「損害賠償請求」「催告解除(通知をした上で契約解除をすること)」「代金減額」「追完請求(補修や修理、代替品の用意)」「催告解除(通知なく契約解除すること)」を請求できます。
インタビュアーより売り主の責任が重くなったということですか?
廣瀬先生そのとおりです。責任の範囲も広がりました。買い主にとっては権利が手厚く保護されるようになったのですが、売り主サイドから見れば物件に問題があったときにより大きなダメージを受けるリスクが高まった、あるいは契約不適合を盾にした悪徳業者に漬け込まれやすくなったと言えるでしょう。
【廣瀬先生より】売り主の皆様が損をしないために
瑕疵担保責任あるいは契約不適合を理由にして買取価格の値引き要求をしたり、一方的に契約を破棄したりする業者も存在します。中には契約前に売り主の物件に瑕疵があることを知りつつ売買契約を締結し、しばらく経ってその瑕疵を理由に買取価格を大幅にダンピングしようとしてくる悪質な業者もいるので十分注意しましょう。
買取業者に物件を売却する際には「瑕疵担保責任免責」は必須項目です。そして契約後すぐに代金を支払ってもらうことを条件にしましょう。支払いを先延ばしにするのは悪徳業者の常套手段です。
なお、不動産仲介業者を通じて物件の売却を検討されている方はまた違った注意点があります。「仲介を検討中の方!契約不適合責任に要注意!」で事例を交えてご紹介していますので、ぜひご覧ください。
「瑕疵担保責任免責」「契約後即支払い」を重視!
「瑕疵担保責任を負わない」「すぐに代金を満額もらう」この2点ができていれば、後から契約破棄されたり安く買い叩かれたりといったリスクを大幅に下げることができます。
訳あり物件買取センターでは原則として「瑕疵担保責任免責」として物件を買い取り、代金は契約を締結したその日にお支払いいたしますので、後からトラブルになるリスクはありません。一般的な買取業者では売れない・トラブルに巻き込まれがちな再建築不可物件も確実に買い取ります。詳しくは「再建築不可物件」をご覧ください。
再建築不可物件の売却にお困りの方、他の買取業者と比較して悩まれている方はこちら「お問い合わせフォーム」よりご相談ください。
仲介業者を通じた売買に関してもさまざまなリスクがあります。
詳しく知りたい方は「仲介を検討中の方!契約不適合責任に要注意!」をご覧ください。
宮野 啓一
株式会社ティー・エム・プランニング 代表取締役
国内 | 不動産トラブルの訴訟・裁判解決件数:150件 |
国内 | 訳あり物件売買取引件数:1150件 |
海外 | 不動産トラブルの訴訟・裁判解決件数:30件 |
※宮野個人の実績件数
経歴
1964年、東京(六本木)生まれ。叔父・叔母がヨーロッパで多くの受賞歴を持つ一級建築士で、幼少期より不動産や建築が身近なものとして育つ。
日本大学卒業後、カリフォルニア州立大学アーバイン校(UCI)に入学。帰国後は大手ビルオーナー会社に就職し、不動産売買を行う。
平成3年、不動産業者免許を取得し、株式会社ティー・エム・プランニングを設立。同時期より第二東京弁護士会の (故)田宮 甫先生に師事し20年以上に渡り民法・民事執行法を学ぶ。
現在まで30年以上、「事件もの」「訴訟絡み」のいわゆる「訳あり物件」のトラブル解決・売買の実績を積む。
またバブル崩壊後の不良債権処理に伴う不動産トラブルについて、国内・海外大手企業のアドバイザーも兼務し数多くの事案を解決。
日本だけでなくアメリカや中国の訳あり物件のトラブル解決・売買にも実績があり、国内・海外の不動産トラブル解決に精通。米国には不動産投資会社を持ち、ハワイ(ワイキキ・アラモアナエリア)・ロサンゼルス(ハリウッド・ビバリーヒルズ・サンタモニカエリア)を中心に事業を行う。
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