必須! 再建築不可物件の増改築・リフォームの基礎知識

必須! 再建築不可物件の増改築・リフォームの基礎知識
2022年10月31日(月)

再建築不可物件とはその名の通り再度建築することができない物件のことを指します。
それでは増築やリフォームはできるのでしょうか?
できるとしたらどの程度まで可能なのでしょうか?

今回は再建築不可物件の増改築やリフォームについて解説し、物件を活用するポイントについてもご紹介します。
再建築不可物件の売買を検討されている方、修繕を考えられている方必見です

再建築不可物件の増改築は原則不可

結論から言うと原則として再建築不可物件は増築や改築、リフォームもできません
たとえ老朽化が進んでいる状態、住むにあたって耐震補強工事などの大幅な修繕が必要な状態であったとしても、あるいは地震や台風などの自然災害で倒壊したとしても、そのままにしておくほかないのです。

とはいえ、すべてがすべてダメというわけでもありません。
一部のリフォームに関しては例外的に可能なケースもあります
増築や改築、大規模なリフォームも、しようと思えばできないこともありません。

まずは再建築不可物件で増改築ができない理由について見ていきましょう。

なぜ増改築できないのか

なぜ増改築できないのか再建築不可物件で増改築やリフォームができないのは再建築と同じ理由です。
建物を建てる際には建築許可を申請しなければなりませんが、再建築不可物件は建築基準法第43条に定められた接道義務(建物は幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならない)を満たしていないがために建築許可が下りないのです。

増築や改築、リフォームも同様に建築許可を申請しなければなりません。
そのため、再建築不可物件では増改築やリフォームも原則不可となるのです

リフォームできる例外

再建築不可物件であってもリフォームできるケースがあります。以下に該当する建物は「4号建築物」と呼ばれ、建築許可申請を省略することができます。

・木造建築物で2階建て以下かつ延床面積500㎡以下、かつ最高高さ13m以下、軒の高さが9m以下
・木造以外の建築物で2階以下、かつ延床面積200㎡以下

また、「10㎡以下の増改築」「主要構造部(壁や柱、梁、階段など)の修繕が1/2以下」の小規模なリフォームや増改築も建築許可申請が不要となります。

そもそもリフォームって?【リフォームの定義】

そもそもリフォームって?【リフォームの定義】ここまでリフォーム、改築、増築という言葉を当たりまえに使ってきましたが、そもそもリフォームとは何を指すのでしょうか?
たとえば建物の一部をつくり変えたり、住宅設備や内装を交換したりするのがリフォーム、建物を追加するのが増築というようなイメージがあるかと思います。

言葉の定義を知っておくことで、再建築不可物件においてどんな工事ができるのか・できないのかがわかってきます。
ここからはリフォーム、改築、増築それぞれの意味について見ていきましょう。

リフォーム

リフォームとは建物の修繕や改修を意味する言葉です。
日本語にすると「増改築」となります。
つまり、改築工事や増築工事を包括した言葉がリフォームなのです
住宅設備の入れ替えや壁紙の張替えといった比較的小規模な工事も、敷地内に建物を建てる大規模な工事もリフォームに含まれます。
建物に何らかの手を加えることと覚えておくとわかりやすいかもしれません。
一般的には小~中規模な改修工事や模様替えを指している印象があります

改築

改築については建築基準法で「建築物の全部または一部を除去した場合、または災害等により失った場合に、これらの建築物または建築物の一部を以前と同じ用途・構造・規模のものに建て替えること」というように定義されています。
たとえば浴槽の交換や床材の張替え、外壁材の再塗装などは改築と言えます。
一度建物を解体してまったく同じ建物を建てるような工事も改築と呼ばれます。
ただし、以下の「増築」は改築とは言わず、別物として扱われます。

増築

増築とは「既存建物に建て増しをする、または既存建築物のある敷地に新たに建物を建築すること」を指します。
既存建築物がある敷地内に別の建物を建築する場合、建築物単位としては「新築」にあたりますが、敷地単位としてみれば「増築」にあたります。
たとえば建物の一部を解体して建物の床面積を増やす行為や、敷地内に今ある建物とは別に「はなれ」や倉庫を設ける行為が該当します。

再建築不可物件を増築するには

再建築不可物件を増築するにはリフォーム(一部を除く)も改築も増築も、原則として建築許可が必要です。
再建築不可物件は建築基準法の接道義務を満たしていないため、建築許可が下りません。
故に再建築不可物件ではリフォーム・改築・増築はできないということになります。

しかし、絶対に不可能かと言われれば、そういうわけでもありません。
再建築可能な状態にすることで、リフォーム・改築・増築が可能となります
ここからはその方法について見ていきましょう。

セットバックの利用

セットバックとは「後退」という意味です。
接している道路の幅員が足りない場合は、自分の土地を後退させることで、接道義務を満たすことができます
たとえば、接している道路の幅員が3.8mだったとしましょう。
この場合は自分の土地を0.2mだけ国や自治体に明け渡して道路として扱ってもらうことで、建築許可が下りるようになります。
ただし、セットバックした分だけ自分の土地が狭くなってしまうことには注意が必要です

隣接している土地の購入

隣の土地が道路に接している場合は、その土地を購入して自分の敷地と合筆(土地を合併させること)をすることで、接道義務を満たし、再建築が可能となります
また、旗竿地などで道路に接している間口が狭い場合、その分だけ隣地を購入して間口を拡げれば、やはり再建築は可能です。
ただし、隣地を買収するのにお金や手間がかかりますので、現実的な方法とはいえないかもしれません。

接道義務但し書きの適用申請

そもそも接道義務は災害時に緊急車両が早く現場に駆けつけ、住民がスムーズに避難できるようにするために設けられた規制です。
その目的さえ達成できるのであれば、道路でなくてもいいということになります。

たとえば敷地の隣に広大な空き地や公園、緑地、農道などの道路に代わるスペースがあり、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認められた場合は建築許可が下りることがあります

再建築不可物件増築の8つのチェックポイント

再建築不可物件は価格が安いため、あえて購入して自分で住んだり、不動産投資物件として活用したりするという方法もあります。
うまくいけば掘り出しものの物件が見つかるかもしれません。とはいえ、通常の中古物件以上に注意をして選ばないと住むことも利益を出すこともできず、「安物外の銭失い」になってしまいかねません。

ここからは再建築不可物件の所持もしくは購入を検討されている方の中で、増築を考えている方向けに、増築にあたり最低限確認しておきたい8つのチェックポイントについてご紹介します。

1.インフラ

増築の際にはインフラ工事も行わなければなりません。
まずは水道や電気、ガスなどのインフラが整備されているかどうか、どこに通っているのかを確認しましょう。
たとえば水道管が隣地に通っている場合は、維持管理を巡って揉めるリスクもありますので注意が必要です。
私設の水道管の場合は老朽化しており、修繕に多額の費用がかかる可能性があります。

2.耐震性

再建築不可物件は耐震性が低い可能性が大です。
というのも、多くの再建築不可物件は接道義務が定められた1950年以前に建てられました。
当時は耐震基準も今より厳しくなかったため、対策が不十分である可能性があります
加えて老朽化によって建物の強度が低下していることも考えられます。
建築許可が下りない再建築不可物件では大掛かりな耐震工事も難しいのが実情です。
また、耐震工事ができたとしても、多額の費用がかかります。

3.建築法上の規定範囲での工事

建物が劣化している、破損がある状態でも、建築基準法の範囲内で修繕できるのであれば問題はありません
たとえばキッチンや浴槽などの設備が古いのであれば、入れ替えることができます。
外壁の塗装が剥げている状態なら、外壁塗装をすることできれいになります。
しかし、前述のような耐震工事を行わなければならない、シロアリ被害や腐食で柱や梁を交換しなければならないなど、大掛かりな工事が必要となると、まずは建築許可が下りる状態にしなければなりません

4.固定資産税の増加

基本的に再建築不可物件は資産価値が低いとみなされ、固定資産税も一般的な物件と比較すると安くなる傾向があります
しかし、逆に税額が上がるケースもあることには注意が必要です。
建物が建っている場合は「住宅用地における軽減措置」の対象となりますが、更地にした場合は対象外となってしまい、固定資産税が上がってしまうのです。
また、「特定空家等」に指定されてしまった場合も、軽減措置の対象外となってしまいます。

5.風通し・日当たり

風通しや日当たりも重要です。
再建築不可物件は住宅密集地の中にあることも多く、風通しや日当たりがあまり良くないケースも少なくありません
風通しや日当たりが悪いと、建物の劣化が進みやすくなってしまいます。
さらに増築するとなればより風通しや日当たりが悪くなってしまう可能性があります。

6.隣人関係

これは再建築不可物件に限りませんが、増築をする際には近隣住民に配慮することが大切です。
工事の騒音や粉塵などでトラブルになるおそれもあります。
工事前には必ず隣人にあいさつ回りをし、事情を説明するようにしましょう

7.雨漏り

雨漏りをしていると雨水が室内に漏れて不快な思いをするだけでなく、柱や梁などの構造体が腐食する、シロアリが増殖するなどの損害が出て、建物の耐久性や耐震性が著しく低下するおそれもあります。
一度天井や天井裏に雨水の染みがあるかどうかをチェックしましょう
加えて増築の場合は、建物と建物との接合部から雨漏りがしやすくなることにも注意が必要です。

8.【重要】増築登記

8.【重要】増築登記増築登記とは建物を増築した際に法務局に行う登記手続きのことです。
不動産登記法で増築登記が義務付けられていますが、実際には手続きが行われていないことも多々あります。
増築登記が行われていないと住宅ローンやリフォームの審査が通らない、売却や相続がスムーズにできない、建物が災害や事故に巻き込まれたときに賠償請求ができない、権利上のトラブルに巻き込まれるといったような、さまざまなデメリットが生じるおそれがあります。

増築をするのであれば、必ず増築登記手続きを行いましょう
また、再建築不可物件を購入される方は、その物件が増築がされているか?
されているのであれば適切に増築登記されているのか?
を確認することが大切です。

注意しないと専門業者にも売却できなくなるかも!?

注意しないと専門業者にも売却できなくなるかも!?一方、所有者からすると、再建築不可物件は売りにくく手を焼かせる存在であることが多いです。
再建築不可物件を専門的に扱っている不動産会社や買取業者もあるのですが、早めに手を打っておかないと、そうした業者でも売却が難しくなってしまいます

たとえば、建物の劣化が進んでしまうと活用できなくなってしまうため、売却が極めて難しくなります。
更地にしてしまうと建物を建てることができなくなってしまう上に固定資産税も上がるため、やはり売るのは困難です。

売却してしまうことでリスク回避

特に所有者の方は再建築物件の扱いに注意が必要です。
そのまま所有し続けていると、どんどん老朽化が進んで、ますます売れなくなってしまいます。
早めに売却することこそが、リスクを回避する一番の方法です。

訳あり物件買取センターは創業から30年以上、再建築不可物件も含めた訳あり物件に特化した不動産取引きを行ってきました。
物件を活用するノウハウや販売網が豊富なため、再建築不可物件でも確実に・好条件で買取ることが可能です

再建築不可物件の処分でお困りの方、どこに行っても断られたという方は、ぜひご相談ください。

監修者

宮野 啓一

株式会社ティー・エム・プランニング 代表取締役

国内 不動産トラブルの訴訟・裁判解決件数:150件
国内 訳あり物件売買取引件数:1150件
海外 不動産トラブルの訴訟・裁判解決件数:30件

※宮野個人の実績件数

宮野啓一

経歴

1964年、東京(六本木)生まれ。叔父・叔母がヨーロッパで多くの受賞歴を持つ一級建築士で、幼少期より不動産や建築が身近なものとして育つ。
日本大学卒業後、カリフォルニア州立大学アーバイン校(UCI)に入学。帰国後は大手ビルオーナー会社に就職し、不動産売買を行う。
平成3年、不動産業者免許を取得し、株式会社ティー・エム・プランニングを設立。同時期より第二東京弁護士会の (故)田宮 甫先生に師事し20年以上に渡り民法・民事執行法を学ぶ。
現在まで30年以上、「事件もの」「訴訟絡み」のいわゆる「訳あり物件」のトラブル解決・売買の実績を積む。
またバブル崩壊後の不良債権処理に伴う不動産トラブルについて、国内・海外大手企業のアドバイザーも兼務し数多くの事案を解決。
日本だけでなくアメリカや中国の訳あり物件のトラブル解決・売買にも実績があり、国内・海外の不動産トラブル解決に精通。米国には不動産投資会社を持ち、ハワイ(ワイキキ・アラモアナエリア)・ロサンゼルス(ハリウッド・ビバリーヒルズ・サンタモニカエリア)を中心に事業を行う。

対象エリア東京都・神奈川県

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